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不動産投資のキャッシュフロー計算|家賃240万円の手残りが50.7万円になるまで

最終更新:2026年8月14日|監修:おうち(宅地建物取引士)

収入から引くものは、4つあります。
空室、運営経費、ローンの返済、そして税金。満室想定で年240万円の物件でも、順に引いていくと手元に残るのは年50.7万円——満室家賃の21%です。
さらに、この50.7万円はずっと同じではありません。減価償却が終わる11年目に、家賃も返済額も変わらないまま7.5万円まで落ちます。順に計算します。

計算の前提

ひとつの物件で最後まで通します。数字はすべてこの前提から機械的に出したもので、実際の物件では変わります。

前提内容
物件一棟アパート 3,000万円(建物1,500万円・土地1,500万円)/築15年の木造
満室想定の家賃年240万円(表面利回り8.00%)
空室・滞納10%を見込む
運営経費実効総収入の20%
借入2,400万円(頭金600万円)/金利2.0%・25年・元利均等
購入諸費用331.4万円(投資用の前提。融資事務手数料が借入額に連動するため、全額の3,000万円を借りると353.6万円になります。内訳はこちら
減価償却簡便法で耐用年数10年 → 年150万円
税率所得税20%・住民税10%の方(復興特別所得税を含め合計30.42%

最初に出ていく自己資金は、頭金600万円+購入諸費用331.4万円=931.4万円。ここを起点に、毎年いくら戻ってくるかを見ていきます。

1年目:家賃240万円が、手残り50.7万円になるまで

段階金額計算
満室想定の家賃収入240.0万円月20万円 × 12ヶ月
− 空室・滞納(10%)▲24.0万円240万円 × 10%
実効総収入216.0万円実際に入金される想定額
− 運営経費(実効の20%)▲43.2万円管理委託費・固都税・保険・修繕など
NOI(純営業収益)172.8万円返済前・税引前の収益力
− ローン年間返済額▲122.1万円月101,725円 × 12ヶ月
税引前キャッシュフロー50.7万円手元に残る現金
− 税金(1年目は還付)+2.1万円不動産所得が赤字のため戻る
税引後キャッシュフロー52.8万円自己資金931.4万円に対し5.67%

表面利回り8%には、この表の4行が入っていません。空室、運営経費、返済、税金。利回りの段階については収益物件を探すときのポイントで整理しましたが、あの記事は返済を引く手前で止めています。ここから先が、実際に口座に残る金額です。

帳簿の利益と、手元の現金は一致しない

ここが最初のつまずきどころです。1年目の不動産所得は24.5万円の赤字。それでも現金は50.7万円増えています。矛盾ではなく、間に逆向きの2項目があるからです。

項目帳簿(不動産所得)現金
実効総収入+216.0万円+216.0万円
運営経費▲43.2万円▲43.2万円
減価償却費▲150.0万円0円
借入金の利息▲47.3万円▲47.3万円
元金の返済0円▲74.8万円
合計−24.5万円+50.7万円

差し引き 150.0 − 74.8 = 75.2万円。赤字24.5万円にこれを足すと、ちょうど50.7万円になります。帳簿が赤字かどうかと、現金が増えるかどうかは、別々に見てください。

なお、赤字24.5万円が丸ごと給与と通算できるわけではありません。借入2,400万円のうち建物価格1,500万円を超える900万円分は「土地等を取得するための負債」とされ、その利子(47.3万円 × 37.5% = 17.7万円)は損益通算から外れます。通算できる赤字は6.8万円、戻るのは約2.1万円です。この仕組みは不動産投資の税還付にまとめました。

返済比率は、満室家賃ではなく実効総収入で見る

年間返済122.1万円は、満室家賃240万円に対して50.9%。ですが、空室を見込んだ実効総収入216万円に対しては56.5%になります。分母を満室で置くと、返済の重さを1割ぶん軽く見積もることになります。

同じ借入2,400万円でも、金利と期間で手残りは大きく動きます。

金利20年25年30年
1.5%年139.0万/CF 33.8万年115.2万/CF 57.6万年99.4万/CF 73.4万
2.0%年145.7万/CF 27.1万年122.1万/CF 50.7万年106.5万/CF 66.3万
2.5%年152.6万/CF 20.2万年129.2万/CF 43.6万年113.8万/CF 59.0万
3.0%年159.7万/CF 13.1万年136.6万/CF 36.2万年121.4万/CF 51.4万

※ 上段が年間返済額、下段が税引前キャッシュフロー(NOI 172.8万円 − 年間返済額)。

金利が1.5%から3.0%に上がると、25年返済で手残りは57.6万円から36.2万円へ。物件は何も変わっていません。変動金利で借りるなら、金利が1%上がった場合の手残りを先に計算しておいてください。

期間を延ばすと手残りは増えますが、支払う利息は増えます。金利2.0%・2,400万円なら、総利息は20年で約514万円、25年で約652万円、30年で約794万円。毎年のキャッシュフローと、生涯で払う利息は、逆方向に動きます。どちらを優先するかは、償却が終わる年や売却の時期をどこに置くかで変わります。

11年目、手残りが7.5万円に落ちる

この物件の減価償却は10年で終わります。11年目からは、家賃も返済額も変わらないのに、経費だけが年150万円分なくなります。

年次1年目5年目10年目11年目25年目
借入金の利息47.3万41.1万32.6万30.8万1.3万
元金の返済74.8万81.0万89.5万91.3万120.8万
減価償却費150.0万150.0万150.0万0円0円
不動産所得−24.5万−18.3万−9.8万+142.0万+171.5万
税金+2.1万+0.9万0円▲43.2万▲52.2万
税引前CF50.7万50.7万50.7万50.7万50.7万
税引後CF52.8万51.6万50.7万7.5万−1.4万

税引前キャッシュフローは25年間ずっと50.7万円です。動いているのは税金だけ。自己資金931.4万円に対する利回りで言えば、1年目の5.67%が11年目には0.81%になります。

原因は2つあります。ひとつは減価償却の終了。もうひとつは、返済が進むほど利息(経費になる)が減り、元金(経費にならない)が増えていくこと。1年目は「償却150万 − 元金74.8万」で75.2万円のプラス側でしたが、11年目は償却がゼロで元金91.3万円だけが残り、91.3万円のマイナス側に反転します。これがデッドクロスと呼ばれる状態です。

この表には、修繕と家賃下落が入っていません。現実には、11年目前後は給湯器やエアコンの更新、外壁や防水の修繕が重なりやすい時期でもあります。築年数が進めば募集家賃も下がります。税引後CFが7.5万円という数字は、それらが起きない前提での上限に近い値だと考えてください。現地で何を見るかは収益物件の現地調査にまとめています。

最初に出ていく931.4万円を、正確に出す

キャッシュフローの分母は自己資金です。「居住用/投資用」を切り替えると、住宅の軽減特例が使えない前提で購入諸費用を計算します。登録不要・その場で試算できます。

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買う前に決めておく3つ

キャッシュフローの計算そのものは、引き算の順番を守るだけです。難しいのは前提の置き方——空室率、経費率、金利、そして償却の残り。数字が合わないときは計算ではなく前提を疑ってください。たいていはそちらが原因です。

よくある質問

不動産投資のキャッシュフローは、どうやって計算しますか?

満室想定の家賃から順に引いていきます。まず空室と滞納の見込みを引いて実効総収入を出し、そこから管理委託費や固定資産税などの運営経費を引くとNOI(純営業収益)になります。NOIからローンの年間返済額を引いたものが税引前キャッシュフロー、さらに税金を引いたものが税引後キャッシュフローです。記事の例では、満室家賃240万円に対し、空室率10%で実効総収入216万円、運営経費を実効総収入の20%として43.2万円を引いてNOIが172.8万円、年間返済122.1万円を引いて税引前キャッシュフローが50.7万円になりました。表面利回りの計算には、この4つのうち3つが入っていません。

帳簿上は赤字なのに、手元にお金が残るのはなぜですか?

帳簿と現金の間に、逆向きの2つの項目があるためです。減価償却費は経費になりますが現金は出ていきません。逆にローンの元金返済は現金が出ていきますが経費になりません。記事の例では、1年目の不動産所得は24.5万円の赤字ですが、減価償却費150万円を足し戻し、元金返済74.8万円を引くと、差し引き75.2万円のプラス。結果として手元には50.7万円の現金が残ります。帳簿が赤字か黒字かと、現金が増えるか減るかは、別々に確認する必要があります。

返済比率は、どれくらいが目安ですか?

一律の基準はありませんが、満室家賃ではなく空室を見込んだ実効総収入に対して計算してください。記事の例では、年間返済122.1万円は満室家賃240万円の50.9%ですが、空室率10%を見込んだ実効総収入216万円に対しては56.5%になります。同じ借入2,400万円でも、金利2.0%・25年なら税引前キャッシュフローは50.7万円、金利3.0%・20年なら13.1万円まで下がります。返済期間を延ばせば毎年の手残りは増えますが、支払う利息の総額は増えます。金利2.0%の場合、20年なら総利息は約514万円、30年なら約794万円です。

減価償却が終わると、手残りはどうなりますか?

家賃も返済額も変わらないのに、税金だけが増えます。記事の例では、築15年の木造を取得したため減価償却は簡便法で10年、11年目からは償却費がゼロになります。税引前キャッシュフローは50.7万円のまま変わりませんが、不動産所得が142万円の黒字に転じ、所得税率20%・住民税率10%の方なら約43.2万円の税負担が生じるため、税引後の手残りは7.5万円まで落ちます。返済が進んで利息が減るほど、この傾向は強まります。買う前に、減価償却の残り年数と、償却が終わった後にどうするか(売る・繰上返済する・保有し続ける)を決めておいてください。

不動産会社にお勤めの方へ

手残りの話をするなら、入口の諸費用と出口の税金まで数字が揃っている必要があります。Sonaureの購入諸費用と売却収支は「居住用/投資家向け」を切り替えられ、減価償却費の累計を反映した手取りも試算できます。PDF/Excelでそのままお渡しできます。

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監修:おうち
宅地建物取引士。物件調査・購入諸費用・売却収支の試算を専門領域とし、Sonaure を開発・監修。運営者情報を見る

※ 本記事は2026年8月時点の法令・税制に基づく一般的な解説であり、特定の物件・投資手法を推奨するものではありません。記載の金額は、物件価格3,000万円(建物1,500万円・土地1,500万円)、築15年の木造、満室想定家賃年240万円、空室・滞納10%、運営経費を実効総収入の20%、借入2,400万円・金利2.0%・25年・元利均等、購入諸費用331.4万円(当サイトの投資用の試算)、所得税率20%・住民税率10%という前提で計算した例です。空室率と経費率は幅を示すために置いた仮定であり、実際の数値は物件・立地・管理方法によって大きく異なります。修繕費、家賃の変動、固定資産税の推移、青色申告特別控除は計算に含めていません。不動産所得が他の所得と合算されることで適用税率の区分が変わる場合、税額は上記と異なります。減価償却の方法と耐用年数、経費として認められる範囲、損益通算の可否は個々の状況によって異なります。実際の申告と納税額は、必ず税理士または所轄の税務署にご確認ください。融資の可否・条件は金融機関の判断によります。本記事は税務相談・投資助言に代わるものではありません。
参考:国税庁 No.2072「青色申告特別控除」/No.1370「不動産収入を受け取ったとき(不動産所得)」/No.1391「不動産所得が赤字のときの他の所得との通算」/No.5404「中古資産の耐用年数」/No.2100「減価償却のあらまし」/租税特別措置法第41条の4(不動産所得に係る損益通算の特例)/所得税基本通達26-9(建物の貸付けが事業として行われているかどうかの判定)