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収益物件の売却でかかる税金|減価償却した分は、売るときに戻ってきます

最終更新:2026年8月9日|監修:おうち(宅地建物取引士)

2,150万円で買った物件を2,200万円で売った。それなのに税金が約238万円。
こういうことが起こります。売買の差額だけ見れば50万円の利益ですが、賃貸に出していた期間の減価償却費は、取得費から差し引かれるためです。建物を10年で償却しきっていれば、取得費は950万円まで下がっています。
減価償却は税金を消しているのではなく、売却時まで繰り延べているだけ。この記事は、そこを計算例で確認するところから始めます。

税額は3つの数字で決まる

収益物件を売ったときの税金(譲渡所得税・住民税)は、給与などとは分けて計算します(分離課税)。順番はこうです。

投資家が見落としがちなのは①の取得費です。ここが「買ったときの金額」ではありません。

取得費は、買った金額から目減りしていく

建物部分については、毎年の減価償却費の合計を差し引いた後の金額が取得費になります。賃貸に出していた期間は事業用ですから、実際に必要経費へ計上した減価償却費の累計がそのまま引かれます。土地は償却しないので、目減りするのは建物だけです。

実際に計上していなくても同じです。事業用資産については、減価償却費を必要経費に算入していなかったとしても、償却できたはずの金額を差し引いて取得費を計算します。「償却してこなかったから取得費は減っていない」とはなりません。

計算例:木造アパートを10年持って売る

築15年の木造アパートを2,000万円(建物1,200万円・土地800万円)で取得し、購入諸費用150万円を含めて取得費2,150万円。10年後に2,200万円で売却したケースです。

項目減価償却を無視すると正しく反映すると
売却価格2,200.0万円2,200.0万円
取得費(償却前)2,150.0万円2,150.0万円
減価償却費の累計− 1,200.0万円
取得費2,150.0万円950.0万円
譲渡費用(仲介手数料・印紙)80.2万円80.2万円
譲渡所得▲30.2万円1,169.8万円
税率(長期)20.315%20.315%
譲渡所得税・住民税0万円約237.6万円
手取り(概算)2,119.8万円1,882.2万円

左の列は「損している」ように見えます。この見立てで売却の判断をすると、約238万円ぶん手取りを読み違えます。保有中に毎年120万円を経費にして所得を圧縮してきたぶんが、売却の年にまとめて課税所得として現れる、という構造です。

中古の耐用年数は、簡便法で短くなる

減価償却の期間は、中古で取得した場合は簡便法で求めるのが一般的です。

いずれも1年未満の端数は切り捨て、2年未満のときは2年とします。住宅用の法定耐用年数と、築15年で取得した場合の年数はこうなります。

構造(住宅用)法定耐用年数築15年で取得建物1,200万円の年間償却額
木造22年10年120万円
軽量鉄骨(骨格材3mm超4mm以下)27年15年80万円
重量鉄骨(骨格材4mm超)34年22年約54.5万円
鉄筋コンクリート47年35年約34.3万円

築古の木造が「節税になる」と言われるのはここです。築25年の木造なら法定耐用年数22年を全部経過しているので、22 × 20% = 4.4 → 4年。1,200万円の建物なら年300万円を経費にできます。ただし4年で取得費が1,200万円ぶん消えるということでもあります。短期間で圧縮した所得は、売却時にまとめて戻ってきます。

税率は所有期間で倍近く違う。判定日は「売った年の1月1日」

ここも間違えやすいところです。所有期間は取得日から丸5年ではなく、取得した日から、売った年の1月1日までで数えます。

区分税率内訳
長期譲渡所得(5年超)20.315%所得税15%+復興特別所得税0.315%+住民税5%
短期譲渡所得(5年以下)39.63%所得税30%+復興特別所得税0.63%+住民税9%

先ほどの例(課税譲渡所得 約1,169.8万円)で比べると、長期なら約237.6万円、短期なら約463.6万円。差は約226万円です。

「5年」の落とし穴。2021年6月に取得した物件を2026年8月に売ると、実際の保有は5年2か月です。しかし判定は2026年1月1日時点で行うので、そこでは4年7か月。短期扱いで39.63%になります。長期の20.315%が使えるのは2027年1月1日以降の売却から。実務上は「取得から丸6年目の年明け以降」と覚えておくと安全です。

マイホームの特例は使えません

自宅の売却でよく出てくる特例は、いずれも自分が住んでいたことが要件です。賃貸用の物件では使えません。

先ほどの例で3,000万円控除が使えれば税額は0円になりますが、賃貸用ではそのまま約237.6万円が残ります。3,000万円特別控除の適用要件も参考にしてください。

売却で損が出ても、給与とは相殺できません

土地や建物の譲渡損失は、ほかの土地建物の譲渡所得とは相殺できますが、相殺しきれない分を事業所得・不動産所得・給与所得などと損益通算することは認められていません。分離課税だからです。

マイホームの売却損には損益通算と繰越控除を認める特例がありますが、賃貸用の物件は対象外です。裏を返すと、利益の出る物件と損の出る物件を同じ年に売れば相殺できます。売却の年をまたぐかどうかで税額が変わるので、複数所有している場合は年またぎの判断が効きます。

売却価格と減価償却費の累計から、手取りを概算

「居住用/投資用」を切り替えると、3,000万円特別控除を外し、入力した減価償却費の累計を取得費から差し引いて計算します。登録不要・その場で試算できます。

売却手取りシミュレーションを使う →

あわせて確認しておきたいこと

売主が課税事業者なら、建物部分に消費税

個人が居住用の賃貸経営だけをしている場合、家賃収入は非課税売上なので課税事業者にならないことが多いのですが、店舗や事務所を貸しているほかに事業があるといった事情で課税事業者になっていると、売却の建物部分に消費税がかかります。土地は非課税です。ご自身が課税事業者かどうかは、売り出す前に確認しておいてください。

譲渡費用に入るもの・入らないもの

譲渡費用は「売るために直接かかった費用」です。仲介手数料、売買契約書の印紙税、測量費、建物の取壊し費用、借家人に支払った立退料などが該当します。一方、抵当権抹消費用やローンの一括返済手数料は譲渡費用になりません。手元の現金からは出ていくのに、税金の計算上は引けない支出です。詳しくは抵当権抹消の費用にまとめています。

確定申告は売った翌年に

譲渡所得が出た年の翌年2月16日から3月15日までに確定申告をします。税額が0円でも、特例を使って0円になる場合は申告が必要です。所有期間の判定や取得費の計算は、購入時の売買契約書・諸費用の領収書・毎年の減価償却の記録がそろっているかで精度が変わります。買ったときの書類は、売るまで捨てないでください。

よくある質問

買った値段より安く売ったのに、なぜ税金がかかるのですか?

賃貸に出していた期間の減価償却費が、取得費から差し引かれるためです。譲渡所得は「売却価格 − 取得費 − 譲渡費用」で計算しますが、この取得費は買ったときの金額そのままではありません。建物部分については、毎年の減価償却費の合計を差し引いた後の金額を使います。たとえば2,150万円で取得し、建物1,200万円を10年で償却しきっていた場合、取得費は950万円まで下がります。2,200万円で売れば、売買価格の差だけ見れば50万円の利益でも、税務上は約1,170万円の譲渡所得になります。減価償却は税金を消しているのではなく、売却時まで繰り延べているだけと考えるほうが実態に近いです。

中古で買った建物の減価償却は、何年で計算しますか?

簡便法で計算するのが一般的です。法定耐用年数の一部だけ経過している場合は「法定耐用年数 − 経過年数 + 経過年数 × 20%」、法定耐用年数を全部経過している場合は「法定耐用年数 × 20%」で求めます。いずれも1年未満の端数は切り捨て、2年に満たないときは2年とします。木造住宅の法定耐用年数は22年なので、築15年で取得した場合は22 − 15 + 3 = 10年です。築25年のように法定耐用年数を過ぎている木造なら22 × 20% = 4.4 で4年になります。期間が短いほど1年あたりの償却費は大きくなりますが、そのぶん取得費の目減りも早く進みます。

所有期間が5年を超えると税率が下がると聞きましたが、いつから数えますか?

取得した日から、売った年の1月1日までで数えます。取得日から丸5年ではありません。たとえば2021年6月に取得した物件を2026年8月に売ると、実際の保有は5年2か月ですが、2026年1月1日時点では4年7か月なので短期譲渡所得の扱いになり、税率は39.63%です。長期の20.315%になるのは2027年1月1日以降の売却からです。課税譲渡所得が約1,170万円のケースでは、短期なら約464万円、長期なら約238万円で、差は約226万円になります。売り時の判断では、この判定日を必ず確認してください。

売却で損が出た場合、給与所得と相殺できますか?

できません。土地や建物の譲渡による損失は、ほかの土地建物の譲渡所得とは相殺できますが、相殺しきれない分を事業所得・不動産所得・給与所得などと損益通算することは認められていません。分離課税だからです。マイホームの売却損には一定の要件のもとで損益通算と繰越控除を認める特例がありますが、賃貸用の物件はその対象外です。同じ年に複数の物件を売る場合は、利益の出る物件と損の出る物件を同じ年にそろえると相殺できるため、売却の年をまたぐかどうかで税額が変わります。

不動産会社にお勤めの方へ

Sonaureの売却収支計算は「居住用/投資家向け」を切り替えられます。投資用では3,000万円特別控除を自動で外し、減価償却費の累計を取得費から差し引いて手取りを試算。そのまま渡せるPDF/Excelで出力できます。購入諸費用のほうも同じ切り替えに対応しています。

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監修:おうち
宅地建物取引士。物件調査・購入諸費用・売却収支の試算を専門領域とし、Sonaure を開発・監修。運営者情報を見る

※ 本記事は2026年8月時点の税制に基づく一般的な解説です。記載の金額は、取得費2,150万円(うち建物1,200万円)・売却価格2,200万円・譲渡費用は仲介手数料と印紙税のみという前提で計算した概算であり、実額は取得時の書類、建物と土地の按分、償却の履歴、適用できる特例によって変わります。減価償却の方法や耐用年数の判定、消費税の課税事業者に当たるかどうかは個別性が高い論点です。実際の申告と納税額は、必ず税理士または所轄の税務署にご確認ください。本記事は税務相談に代わるものではありません。
参考:国税庁 No.3202「譲渡所得の計算のしかた(分離課税)」/No.3208「長期譲渡所得の税額の計算」/No.3211「短期譲渡所得の税額の計算」/No.3261「建物の取得費の計算」/No.3203「不動産を譲渡して譲渡損失が生じた場合」/No.5404「中古資産の耐用年数」/所得税法・租税特別措置法/減価償却資産の耐用年数等に関する省令