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戻る金額は「赤字の全額」ではなく、赤字 × 税率です。ここを取り違えると期待値が大きくずれます。
以下の前提で計算します。数字はすべてこの前提から機械的に出したもので、実際の物件では変わります。
| 前提 | 内容 |
|---|---|
| 物件 | 2,000万円(建物1,200万円・土地800万円)/築15年の木造 |
| 減価償却 | 簡便法で耐用年数10年 → 年120万円(計算方法はこちら) |
| 家賃収入 | 年120万円(月10万円・満室想定) |
| 運営経費 | 年20万円(管理費・固定資産税・保険など) |
| 借入 | 金利2.0%・25年・元利均等 |
| 税率 | 所得税20%・住民税10%の方(復興特別所得税を含め合計30.42%) |
ここが最も知られていない制限です。租税特別措置法41条の4により、不動産所得の損失のうち土地等を取得するために要した負債の利子に相当する部分は、損益通算では生じなかったものとみなされます。
そして、土地と建物を一括して借り入れた場合、借入金はまず建物の取得価額に充てられ、次に土地の取得価額に充てられたものとして計算できます。つまり建物価格を超えた借入部分が「土地の負債」になります。
| 1年目 | A 全額借入 2,000万円 | B 頭金800万・借入1,200万 |
|---|---|---|
| 毎月の返済額 | 84,771円 | 50,863円 |
| 1年目の利息 | 39.4万円 | 23.7万円 |
| うち通算できない土地分 | ▲15.8万円 | 0円 |
| 損益通算できる赤字 | 43.7万円 | 43.7万円 |
| 還付+住民税の減額 | 約13.3万円 | 約13.3万円 |
| 年間の手残り(税引前) | −1.7万円 | +39.0万円 |
| 還付を含めた手残り | +11.6万円 | +52.2万円 |
還付額は、まったく同じ13.3万円です。偶然ではありません。多く借りたぶんの利子は、そっくりそのまま「土地の負債利子」として通算から外れるからです。「フルローンにすれば節税額が増える」は、この制度のもとでは成り立ちません。増えるのは毎月の返済額だけで、手残りは40万円以上変わります。
この例の減価償却は10年で終わります。11年目からは、家賃も返済額も変わらないのに、経費だけが年120万円分なくなります。
| ケースA | 1年目 | 11年目 |
|---|---|---|
| 減価償却費 | 120万円 | 0円 |
| 借入金の利息 | 39.4万円 | 25.7万円 |
| 不動産所得 | −59.4万円 | +74.3万円 |
| 税金 | 約13.3万円の還付 | 約22.6万円の負担 |
| 手残り(税引前) | −1.7万円 | −1.7万円 |
| 手残り(税引後) | +11.6万円 | −24.3万円 |
手元に入る現金は1円も変わっていないのに、税引後では35.9万円悪化します。元本の返済は経費になりませんから、返済が進んで利息の割合が下がるほど、この傾向は強まります。いわゆるデッドクロスです。
だから、減価償却の残り年数は買う前に確認してください。築古の木造は償却期間が短く、1年あたりの償却費が大きくなります。そのぶん還付は大きいのですが、終わるのも早いということです。
減価償却で圧縮した所得は、消えたわけではありません。売却時に、償却した分だけ取得費が目減りしているため、そのぶん譲渡所得が大きくなって課税されます。
この例なら、10年で1,200万円を償却しきった時点で、建物の取得費はゼロになっています。売却価格が同じでも、償却しなかった場合に比べて譲渡所得は1,200万円多くなる計算です。くわしくは収益物件の売却でかかる税金にまとめました。
ここまで限界を並べましたが、仕組みそのものが無意味なわけではありません。効きやすいのは次の条件です。
逆に、還付そのものを目的にするのは本末転倒になりがちです。還付は赤字の裏返しで、赤字は多くの場合、実際の持ち出しを伴います。この例のAは、13.3万円が戻っても、手残りは年11.6万円。判断は「還付額」ではなく「返済と税金を引いたあとに残る現金」で行ってください。
給与所得者でも、損益通算を受けるには確定申告が必要です。年末調整では処理できません。
損益通算です。不動産所得が赤字になった場合、その赤字を給与所得などから差し引いて所得税を計算し直せるため、給与から源泉徴収されていた所得税が戻り、翌年の住民税も下がります。つまり儲かっているから返ってくるのではなく、税務上の赤字が出ているから返ってきます。赤字の主な原因は減価償却費で、これは実際に現金が出ていかない経費です。現金は減っていないのに帳簿上は赤字になるため、その分だけ税負担が軽くなるという構造です。ただし損益通算には制限があり、また減価償却が終われば赤字も還付もなくなります。
増えません。租税特別措置法41条の4により、不動産所得の損失のうち土地等を取得するために要した負債の利子に相当する部分は、損益通算では生じなかったものとみなされます。そして土地と建物を一括して借り入れた場合、借入金はまず建物の取得価額に充てられ、次に土地の取得価額に充てられたものとして計算できます。つまり建物価格を超える借入部分が土地の負債となり、その利子は通算できません。建物1,200万円・土地800万円の物件で全額の2,000万円を借りても、頭金800万円を入れて1,200万円だけ借りても、同じ条件なら損益通算できる赤字は同額になります。増えるのは毎月の返済額だけです。
減価償却が終わるまでです。中古の木造住宅を築15年で取得した場合、簡便法による耐用年数は10年になるため、11年目からは減価償却費がゼロになります。家賃も返済額も変わらないのに、経費だけが大きく減るので不動産所得は黒字に転じ、今度は課税される側に回ります。記事の計算例では、1年目は還付を含めて年11.6万円のプラスだったものが、11年目は税引後で24.3万円のマイナスになり、その差は35.9万円でした。元本の返済は経費になりませんから、返済が進むほどこの傾向は強まります。減価償却の残り年数は、買う前に必ず確認してください。
還付は赤字の裏返しなので、還付を目的にすること自体は本末転倒になりがちです。返ってくるのは赤字額に税率を掛けた分だけで、赤字の全額ではありません。所得税率20%と住民税10%の方なら、43.7万円の赤字に対して戻るのは約13.3万円です。残りは持ち出しです。さらに減価償却で圧縮した所得は、売却時に取得費が目減りする形で課税されるため、消えたのではなく繰り延べられているにすぎません。判断するなら、還付額だけを見るのではなく、返済と税金を引いたあとに手元に残る現金で見てください。個別の税務判断は必ず税理士にご確認ください。
還付の話をするなら、諸費用と売却時の税金まで含めた数字が要ります。Sonaureの購入諸費用と売却収支は「居住用/投資家向け」を切り替えられ、減価償却費の累計を反映した手取りも試算できます。PDF/Excelでそのままお渡しできます。
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お問い合わせフォームへ →※ 本記事は2026年8月時点の税制に基づく一般的な解説であり、特定の物件・投資手法を推奨するものではありません。記載の金額は、物件価格2,000万円(建物1,200万円・土地800万円)、築15年の木造、家賃年120万円、運営経費年20万円、金利2.0%・25年・元利均等、所得税率20%・住民税率10%という前提で計算した例です。取得時の諸費用、空室、修繕、家賃の変動、固定資産税の推移は考慮していません。適用できる税率、減価償却の方法と耐用年数、経費として認められる範囲、損益通算の可否は、個々の状況によって異なります。実際の申告と納税額は、必ず税理士または所轄の税務署にご確認ください。本記事は税務相談に代わるものではありません。
参考:国税庁 No.1391「不動産所得が赤字のときの他の所得との通算」/租税特別措置法第41条の4(不動産所得に係る損益通算の特例)および同法施行令・関係通達(土地等を取得するために要した負債の利子、借入金の充当の順序)/所得税基本通達26-9(建物の貸付けが事業として行われているかどうかの判定)/国税庁 No.5404「中古資産の耐用年数」/No.3208「長期譲渡所得の税額の計算」